「ええと。混乱してきた。『劇場版 ムーミン 南の海で楽しいバカンス』とは別なのか?」
「別だ」
「今、2本の異なるムーミン映画が公開中なのか?」
「そういうことになる」
「昔あった映画の【ムーミン谷の彗星】とは別物なのか?」
「あっちはアニメ。こっちはパペット。別物だ」
「じゃあさ。バカンスと彗星。新作対決はどっちが面白いと思う?」
「彗星」
「でもさ。彗星は昔のパペットのテレビ番組の再編集だろ?」
「そうだ」
「なのに、新作より面白いの?」
「別に驚くほどのことではない。最近では某宇宙戦艦ヤマト2199も、新作劇場版よりTVシリーズの再編集版の方が優れていた」
「ひ~」
「だからさ。編集は創作なんだよ。同じフィルムを活かすも殺すも編集次第。しかも、編集に徹するならスタッフは少なくて住むので、意思を統一して強烈な演出をやりやすい」
「では、宇宙戦艦ヤマト2199を離れムーミン谷へはるばる臨んだ君が見出したのは、同じ構図ってことなのない?」
「ヤマトにせよムーミンにせよ、多くの人に思い入れがありすぎる作品は新作劇場版を大人数で作ると迷走しちゃうのだろう。まあ、バカンスはそれほど悪くはなかったよ。さすがにこれは……という部分はいくつかあったけど」
見どころ §
「大変だ。スノークのお嬢さんが触手植物の化け物に拘束されて逃げられないぞ」
「ひ~」
「当然スノークのお嬢さんは全裸だぞ」
「ひ~」
「スノークのお嬢さんが脱出したと思ったら今度はムーミン少年が」
「ひ~」
「当然ムーミン少年は全裸だぞ」
「ひ~」
「そうそう。こんな感じでエロシーンもしっかりあるよ。スノークのお嬢さんでマスがかけるならね」
「ひ~」
「それはさておき、今回は字幕で英語。スノークのお嬢さんはなんと言っているか聞いて見たらスノークメイデンだった」
「それにどんな意味が?」
「ムーミンパパ、ムーミンママと同じような用語でしかなかった」
「話はそれだけ?」
「いや、彗星の段階で実はスノークメイデンはスノークの付属品であって、それほど大きなキャラクター性が存在しないことが分かった」
「ヒロインじゃないの?」
「実は、スノークメイデンの名前は比較的早いうちから出てくるが、実際に登場するのはかなり後で、ヒロインというには弱いことが分かった。守られるべき弱い者としては、実はスニフの方が余程ヒロイン的なポジションだったと分かったよ」
「それは女性の存在感がとても弱いってこと?」
「そう。ふしぎなことにムーミン谷の彗星では女性の存在感がとても薄い」
「ミーは? ミムラは?」
「出てこない」
「なんてこった」
「この映画のスノークメイデンは、外見を気にしてばかりの自己主張の無い少女なのだ」
お買い物 §
「凄く強烈なのがお買い物のシーン。誰も金を持っていないので、会計ができず、スナフキンがズボンを返品すると、その分のお金で他のものの代金は賄えると言われて、支払わずに済んでしまう。落語の【時そば】【時うどん】的な金額を誤魔化す話になっていて興味深い。でも、店の婆さんが勝手に金額を間違えているので、別に誰かを騙す話にはなっていない」
「運が良いのか悪いのか」
「非常に不思議な話になっているよ」
主題歌 §
「主題歌が変な歌なのだが、聞いているとクセになる。良い歌」
「これでいいのかよ」
「ちゃんと聞いてごらんよ。最初は変だと思ってもだんだんクセになるから」